運動について

運動指針2006で用いられているメッツ(METs)について教えて下さい。

メッツ(METs)は、運動などで消費するエネルギー量が、座って安静にしている時のエネルギー消費量の何倍にあたるかを示す単位で、身体活動・運動の強度を示しています。語源はmetabolite(代謝産物)で、通常METまたはMETs、日本語ではメッツとして使われています。安静状態を1METと決め、安静時の2倍の運動量(エネルギー消費量)が2METsで、普通の歩行(70m/min)は約3METsとなります。メッツ表示法はエネルギー消費量計算にも便利で、1METでは体重1kg、1分間当たりに約3.5mlの酸素を使用し、体重1kg当たり1時間で約1kcal(1kcal・kg-1・時間-1)のエネルギーを消費します。まとめると、1METは体重1kg 当たり1分間に3.5mlの酸素を消費し、1時間で1kcalのエネルギーを消費するような運動の強さです。

メッツによるエネルギー消費計算の例
消費エネルギー(kcal)≒体重(kg )×METs数×運動時間(時間)
体重60kg の松○信○さんが5METsのエクササイズを30分間行ったとすれば、
消費エネルギー≒60 kg×5METs×0.5時間=150kcal

と計算できます。
「健康づくりのための運動基準(2006年)~身体活動・運動・体力~」報告書では、身体活動(運動/生活活動)量をエクササイズ(=メッツ×時間;メッツ・時)と定めて、健康づくりに必要な身体活動量として、週に23エクササイズ(メッツ・時)の活発な身体活動、その内4エクササイズは活発な運動を行うことを勧めています。なお、多くの身体活動・運動のMETsが国立健康・栄養研究所のホームページ上に公開されています。

(大平雅美)

運動強度でATとは何か教えて下さい。

ATとは嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold)のことで、「増加する運動強度において、有機的エネルギー産生に無機的代謝によるエネルギー産生が加わる直前の酸素摂取量(V(・)O2)または運動強度」と定義され、持久性体力(心肺持久力)の目安です。今日でも運動生理学やスポーツ科学ではV(・)O2maxが持久性体力評価のゴールデンスタンダードとされていますが、評価時に運動強度を限界まで高める必要があり、運動不足気味の青少年、有疾病者や高齢者の評価には安全面などでATによる評価が適しています。

ATは呼気ガス分析あるいは血中乳酸濃度で判定され、呼気ガスによる判定では、運動負荷を徐々に増加していくテスト(漸増運動負荷テスト)を行いながら呼気を採取・分析します。運動強度の増加とともに炭酸ガス排出量および換気量は直線的に増えますが、ある強度を超えると非直線的に増加し始めます。この点がATで、換気閥値(ventilatory threshold:VT)と呼ばれます。血中乳酸濃度で判定する場合、テスト中に採血・測定した乳酸が安静時以上に蓄積し始める点を乳酸間値(lactate threshold:LT)と呼び、VTとほぼ一致します。

特別なトレーニングを行っていない健常人(青少年も含む)のATは、50~60%V(・)O2maxですが、トレーニングによって増加し、持久性競技選手では70~80%V(・)O2maxと高い値が観察されています。トレーニングによってATが増す理由として、筋収縮に際して脂肪からより多くのエネルギーを得ることができるようになること、ミトコンドリアや毛細血管数が増大し、筋線維の酸化能力が高まることなどが指摘されています。

このようにATは生活習慣病予防・治療を目的とした運動・スポーツや運動療法の運動処方や効果判定の客観的指標として使われています。

(大平雅美)

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