保健・医療について

血液検査値に地域差はあるのでしょうか?

私たちが長野県内の3中学校(都市部、農村部、山間部)で実施している生活習慣病調査の結果では、都市部の中学校の生徒さんで脂質異常症、高血糖、高尿酸血症の頻度が高い傾向がみられ、食事・運動・生活習慣との関連が伺われました。

(本郷 実)

小児期の検査値の異常と大人になってからの生活習慣病に関連があるのでしょうか?

小児期肥満、特に思春期肥満の70~80%が成人肥満へ移行するといわれています。また、小児期にLDLコレステロール高値、HDLコレステロール低値、中性脂肪高値、収縮期高血圧などの動脈硬化の危険因子を多く認める人では、成人になってから動脈硬化の進行が見られるといわれています。小児期肥満の学童の内、どの位が将来生活習慣病になるかについては判っていない点も多いのですが、最近の海外の前向き研究により、小児期肥満と25歳以降の冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発症リスクに正の相関があることが明らかになりました。また、長野県内で実施した私たちの後ろ向き研究では、20~40歳の若年で狭心症、心筋梗塞を発症した患者さんの最も重要な発症因子は小児期肥満であることが判りました。

(本郷 実)

現在の小児生活習慣病検査について教えて下さい。

①実施年齢と小中学生で重視する項目は?
① 現在、小学校5年と中学校2年で小児生活習慣病検査を実施している学校が多いようです。年齢について問題はないと思われますが、血液検査だけではなく、可能であれば出生体重を含む生活習慣のアンケート調査を実施してみては如何でしょうか。家族も一緒に参加出来るように工夫してみるとよいでしょう。

小中学生で重視する項目は、生活習慣病に関連した肥満度、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール(表1の計算式により算出する)、空腹時血糖、尿酸、肝機能(AST、ALTなど)のほか貧血検査(赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット)です。また、可能であれば、腹囲、ヘモグロビンA1C、鉄の測定をすると良いでしょう。


②年齢による検査値の生理的特性はあるのでしょうか?
② 中学生では、一般に女子の方が男子に比較して、血清総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪は約10%高値を、赤血球、ヘモグロビンは約20%低値を示します。一方、男子では尿酸が約25%高い値を示します。


③検査値が異常を示した場合、再検査はいつ頃実施するのが良いのでしょうか?
③ 一般に、食事・運動の指導を開始した後、改善がみられてから再検査をするのがよいでしょう。大人の高血圧、脂質異常症の管理計画では薬物治療開始に先立ち、それぞれ1~3ヶ月、3~6ヶ月の生活習慣の改善指導が推奨されています。したがって、小児でも少なくともこれらの期間をおいて再検査するのが良いでしょう。

(本郷 実)

長野県の小児生活習慣病の課題について教えて下さい。

全国の学会で私たちの小児生活習慣病の調査結果を発表したところ、しばしば、高血糖の頻度が高率ではないか、との指摘を受けています。人間ドックを受けた40~50歳代を中心とする長野県内成人38,983人のデータを解析した日本病院会予防委員会の報告(2003年)では、耐糖能異常(糖尿病+予備軍)が全国5位、肥満は16位(39歳以下では10位)、高血圧11位、高中性脂肪血症14位といわれています。家族で一緒に暮らすこどもが、大人と同じような食事・生活習慣を通してこれらの生活習慣病を持っているとしても不思議ではないかも知れません。これらの事実から、こどもの生活習慣の改善、生活習慣病の予防には家族を含めた教育・啓発活動が不可欠と考えられます。

(本郷 実)

解決のために学校で取り組めることや必要なことは何でしょうか。また、家庭や子ども達に対する効果的な指導方法、啓発方法について教えて下さい。

“肥満”を認めた場合、その他に高血圧、脂質異常症、高血糖、高尿酸血症などの生活習慣病が存在するのかを見極めることが大切です。ただし、複数の生活習慣病を持っている学童のうち約25%では、身体測定上“肥満”が見られなかったことに注目するべきで、“肥満がないからといって必ずしも安心とはいえない”ようです。背景には、体質的(遺伝的)な問題などがあるようです。

学校での取り組みとしては、校医の先生ともよく相談して生活習慣病関連項目に複数の問題点がみられた生徒さんには、食事・運動・生活習慣の詳細について家族・保護者も交えて個別の指導が出来ればと思います。生徒さんには、先ず生活習慣病とは何か? なぜ問題なのか? といった点から教育し、必要であれば、教育関係者のほか医療従事者が学校教育現場へ入って、講演会、保健委員会などでわかりやすく教えていく必要があるのではないかと思います。そのために、私どもの医療チームでは、学校出前クリニック、出前授業、食育講座などを実施しています。ご連絡頂ければ、ご相談させて頂きたいと思います。
(連絡先:信州大学医学部保健学科本郷研究室 電話/ファックス0263-37-2402)

(本郷 実)

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